第28章 歯車
「もう、それは言い過ぎです!でもお公家様達に会うかもしれないと思うと、やはり緊張します」
何と言っても殿上人、雲の上の様な存在の人達だ。(信長様もなんだけど....)
「奴らとて同じ人だ。それに京は、俺と貴様が初めて会った思い出の地だ。案ずることはない」
優しく伸びた手は私の頭を引き寄せ、軽く口づける。
「.....思い出の地........そうですね。ふふっ、私たち、出会い方はかなり強烈でしたけどね」
命を狙う者と狙われる者。
私達はそんな出会い方で、しかも決着はあっという間についた。
知らなかったとは言え、信長様の命を奪えると思ってたなんて、今思えばかなり無謀だ........
「そのせいで今や貴様に夢中だ、命ではなく俺の心を奪った責任は取ってもらわねばな」
身体を起こした信長様はニヤリと含み笑いをし、私の背中に素早く腕を添えて褥へと倒した。
「せ、責任って.......今!?.......今夜も、その、...するんですか?」
明日は日の出と共に出発して京入りをすると言っていたけど......
「寝る前に貴様の甘い声を聞かねば俺の眠りは訪れん」
「で、でも、明日は早いですし....、そうだ!眠れるように、子守唄でも歌いましょうか?」
「貴様の意識が保てば、抱いた後で聞いてやる」
「意識って、そんなに!?....ひゃぁっ!」
小袖と違って寝間着の紐は簡単に解かれ、露わになった胸は、悪戯な口と手に捕らえられた。
「ん、.....っ.....」
更に口を塞がれた私には、選択肢は一つしか残されていない。今夜も、抱かれる事は決定したようだ。
「........ 空良、先程の言葉、訂正させろ」
私の胸を片手で遊ばせながら、信長様は口を開いた。
「.......ん......訂正?」
「俺も、緊張した時がある事を思い出した」
「はい?」
思い出したって、緊張の話?