第27章 逢引き
「そ、それは.....」
う〜、過剰接触で他の皆の所に行かせてくれなさそうだから。と言う本当の事を言ったら凄いお仕置きをされそうで言えない.......
「の、信長様とは、こうしてゆっくりとお話をしたかったので..........」
本当の理由は怖くて言えないけど、日中中々会えない信長様とこうしてお茶を、しかも自室として頂いた部屋で飲めるなんて幸せなのも本当だから、嘘はついてない。うん、ついてない。
「ふんっ、いつの間に誤魔化す事を覚えたのかは知らんが、まぁ、そう言う事にしてやる」
納得のしている顔ではなかったけど、一応理解はしてくれたのか、信長様はお茶をもう一口飲んだ。
「麻の指導はどうだ?」
「あ、はい。とても的確で分かりやすく教えてもらってます」
「奴は全てにおいて万能な間者だ。夜の手管もな、なぁ麻?」
悪戯に笑う顔は、麻に同意を求める。
「はい。お望みでしたらそちらの方もご指導させて頂きます」
麻もにこりと笑って頭を下げる。
「てっ、手管って.......」
手管と言う言葉に焦っているのは私だけ......?
男の人は、やはりそう言ったものを求めるのだろうか?
「あ、あの.....、やはり手管は........あったほうがいいですか?」
女中部屋で日々繰り広げられる男女の睦事の会話からも、常になすがままの私ではダメなのかもとは思っていたけど......
「阿呆、冗談だ」
信長様は、私の言葉にお茶を吹きこぼしそうになりながらも、困った顔をして否定の言葉を口にした。
「貴様に手管などを覚えられては、鬼に金棒......いや龍に翼だな」
「?」
(どう言うこと?)
「分からんでいい。貴様はそのままで十分に俺を夢中にさせておる、手管など無用だ」
ぐいっと飲み干すと、湯呑みを下に置いた。
「あっ、そう言えば、この打掛ありがとうございます。とても素敵で気に入ってます。大切に着ますね」
「気に入ったのならいい。良く似合っている。礼なら今夜もらうゆえ気にするな」
意味深な笑いと言葉に心の臓はたちまちに騒ぎ出す。
ほら、やっぱり油断ならない。
この言葉と目で見つめられると私は抗えなくなる。