第27章 逢引き
「まぁ、空良様、一体どちらまで行かれてたのですか?」
思った通り、麻は自室で信長様と待っていてくれた.............
ん?..........信長様と?
「の、ののの信長様っ、どうしてここに!?」
今の今まで探していた私の苦労は?
「やっと戻ったか。この跳ねっ返りが」
脇息に肩肘を付き片眉を上げてニヤリとしているのは、私が探していた人。
「ここにいるなんて知らなくて......私、信長様を探してたんですよ........って、っわぁっ!」
慌てて近くまで行こうとした途端、つま先が打掛に引っかかった。
「きゃあっ!」
そのまま目の前に座っている信長様に倒れ込んだ。
「ごっ、ごめんなさい」
「くくっ...貴様は本当に飽きんな。俺の胸に飛び込んで来るほど会いたかったと見える」
顔を崩して心底可笑しそうに笑う信長様は、受け止めた私の体を抱きしめて、額に口づけた。
「そ、そういう訳では.......打掛につまづいてしまって.....」
会いたかったけど、今は明るい時間で麻も目の前にいる。額以外に口づけられる前に、私は素早く体を起こして信長様から距離を取った。
「あっ、あの私、お茶をお持ちしようと思って.....」
「あぁ、麻から聞いた。俺も貴様の様子が気になって見に来たんだが.....入れ違ったみたいだな」
「そうだったんですね」
信長様も会いたいって思ってくれたんだ。
何だか、心が通じ合っているみたいで嬉しい。
「あっ、お茶、淹れますね」
麻がさり気なく私の横にスッと置いてくれた膳の上でお茶を淹れて、信長様にお渡しした。
「聞けば、皆の所にはもう言ったそうだな」
お茶を手にすると一口飲み、信長様は口を開いた。
「あ、はい。三成君には会えませんでしたが.....」
「なぜ俺の所に最初に来ぬ?」
目を細めて私を見るその顔は、少しだけ拗ねて見えた。