第27章 逢引き
「何だ、そんなにもじっと見つめて。お前の大きな目が飛び出て今にも落ちそうだぞ?」
光秀さんはそう言って笑いながら、おっとっと..、と私の目の下に手を差し出して拾うような仕草をした。
「もう、目は落ちたりしません」
「分からぬぞ?お前の目は大きくて丸いからな。いつか落ちてしまいそうだ」
「じゃあ、落ちた時はお知らせしますね」
いつもの揶揄いにプイッとそっぽを向く。
「打掛を着ても中身は変わらぬと見える。相変わらず揶揄いがいのある娘だ」
綺麗な顔が意地悪を言うと、意地悪加減が倍増されると思うのは私だけだろうか。
「そ、そんなに簡単には変われません!」
光秀さんの嫌味を上手くかわすなんて事も私には到底できず、結局最後はムクれてしまう。
「そんなにムクれるな。似合っていないとは言っていない。あぁ、あと御館様なら天主にはいらっしゃらないぞ」
今度は”どうどう”と、私を暴れ馬を宥めるような仕草をしながら話を始めた。
「えっ、信長様.....どこに行かれたんですか?」
「さぁ、だがまだ出ていかれたばかりだ。視察でなければ城内にいらっしゃるだろう」
「あっ、じゃあ私、探します!光秀さん失礼しますね」
「あっ、空良様っ、お待ち下さい!」
会う前は緊張したけど、会えないとなると途端に会いたくなる。
なんて勝手な私........
光秀さんの言葉にいてもたってもいられなくなり、何故信長様に会いに天主に来たのかとの目的も忘れて、麻の呼び止める声を背後にとりあえず大広間へと足を向けた。
「.........いない........」
向かった大広間は開けっ放しの状態で使われてはおらず、信長様の姿も勿論なかった。
「どこ行ったんだろう?」
秀吉さんは自室にいたから、一人で外出はしてないよね?
後はどこだろう?
道場や書庫、大広間以外で使いそうな広間など、探せる所は探したけれど信長様は見つからず........
諦めた私はとぼとぼと、麻を待たせているであろう自室へと戻った。
「麻ごめんね。勝手にいなくなって..........」