第27章 逢引き
『そうじゃない。優しい奴はこんな寒空の下での任務をさせたりなんかしない。結局は国の為、俺の為だ。まぁこんな事も、信長様が天下を一つに束ねた時に終わるだろうがな』
『うん。早くその日が来ると良いね。あっ、そうだこれ....』
今朝中庭に降りた時取った柚子が袂に入っている事を思い出し、それを取り出し政宗に渡した。
『おっ、柚子か』
『うん。生姜と一緒に何か身体が温まるもの作ってあげてね』
『任せとけ』
『政宗のお茶、ここに置いておくから飲んでね。じゃあ行くね』
政宗のお茶を淹れ終え、お茶道具一式を膳に乗せて台所から出ようとした時........、
『空良っ』
呼び止められた。
『................何?』
『空良、敵はなにも京だけじゃない』
『う、うん?』
政宗?
『初めからそんなにガチガチじゃあ、簡単に足元掬われちまう。もっと力を抜いていけ』
『私、そんなに分かりやすくガチガチ?』
『獣の世界ならとっくに喰われてる。お前は苦労した割に、馬鹿正直で騙されやすいからな。もっと自信を持って構えてりゃいい』
『う、うん』
何だか、けなされたような褒められてような、複雑だな.......
『こんな世の中だ。どこ行ったって、いい奴もいれば悪い奴もいる。お前の心の芯がしっかりしてれば何があっても大丈夫だ。俺達がお前を信長様の相手と認めたように、京の連中を見返してこい!』
あ、そうか!
これは、政宗なりの励ましの言葉だ。
『政宗ありがとう。何だか元気になった。頑張るね』
『おう!』
家康にもどきどきしたけど、政宗にも少しときめいちゃったな.....
信長様もそうだけど、一国を背負う武将って、全ての生き様がカッコよくて、恋心はなくても惹かれてしまう。
............そんなこんなで、政宗には秀吉さんよりも前に会ってお茶を渡せていたので、残すは三成君となった。