第27章 逢引き
「ほんとバカだね。そうやってすぐ食べ物に釣られない練習しなよ!俺の薬だって万能じゃ無いんだから」
「はーい、気をつけます」
「ん、やっぱりあんたは畏まってるよりその方がいい。そうやっていつも笑ってなよ」
私の食い意地に呆れながらも、最後はあまり見たことのない優しい笑顔を見せてくれた。
「あ、ありがとう。頑張るね」
こんな笑顔見せられたら、女の子は皆好きになっちゃいそう。素っ気ないから分かりづらいけど、家康と恋をする女の子はきっと幸せだろうな。
京には家康も来てくれると言う何とも頼もしい言葉と勇気を貰い、私は家康の部屋を出た。
「えっと、あとは三成くんの部屋だね」
光秀さんは信長様と天主で京への話を詰めている最中だから一緒でいいし、政宗にはさっき台所で既に会ったし...............
『なんだ?どこの姫かと思えばお前か。どうしたそんな格好して。今から裳着(もぎ)でも行うのか?』
皆に淹れるお茶を用意するため台所へ行くと、政宗が腕捲りをして料理を作っていて、開口一番に揶揄われた。
『もう!裳着って、そんな訳ないでしょ!』
成人の儀式なんてとっくに済ませてるし....
『冗談だ。だが料理を作りに来た訳じゃなさそうだな』
『あ、うん。少しは姫らしくと思って、その練習を兼ねて皆にお茶でも持っていこうと思って』
『ふーん。まぁ、頑張れよ』
料理に夢中で心ここに在らずって感じの返事だけど、どうしてこんな朝早くから台所にいるのかが気になる。
『政宗は?......こんな時間からもう台所にいるの?』
朝餉は済んだばかりだし、昼餉は作ってるの見た事ないけど....
『ああ、斥候として森や林に潜ませてる奴らに食わせてやる飯を考案してる最中だ』
『え、斥候の方達のご飯も政宗が作ってるの?』
『いつもって訳じゃない。だがどんな寒空の下でも過酷な任務をこなすあいつらに、せめて美味い飯を食わせてやりたいからな』
『そうなんだ.........優しいね』
人を喜ばせたい。そんな政宗の料理が優しい味なのはとても納得だ。