第27章 逢引き
「っ、......バカじゃないの?それを言うなら今はあの人の恋仲で、もうかなり成り上がったんじゃないの?」
「あ、そうか。......私、信長様と恋仲だったんだ。ふふっ」
「今の言葉、あの人に聞かせない方がいいよ?」
「そ、そうだね。家康も言わないでね」
(物凄いお仕置きされそうだから......)
「いいよ。あんた必死で可哀想だから、黙っててあげる」
ふっと、少し目を細めて、家康はやっと顔を緩めてくれた。
「まぁ、京には俺も付いて行くから、あまり無理しないで気楽に頑張りなよ」
お茶を飲みながら、家康は意外な言葉をくれた。
「えっ!家康も来てくれるの?って、信長様の付き添いで?」
でも、確か付き添いは光秀さんと秀吉さんのはず......
「俺はあんたの見張り役」
「私の見張り?私が粗相しない様にって事?」
「ほんとバカだね。それはそこにいる光秀さんとこの麻の仕事でしょ?俺は、あんたが万が一に毒でも盛られたりした時の為だよ」
「毒を.....盛られる.......?私が........?」
喉がゴクリと鳴った。
薬を盛った事がある本人が驚くなんて、きっと家康の方が驚きだろうけど.......
「言いたくないけど、あんたを邪魔だと思う輩がこの安土を出ればたくさんいるって事!」
それはすなわち、命を狙われるかもしれない覚悟も必要なんだって事を家康は言ってるんだ。
「あんた食い意地張ってるから、あっちに行ったら何でも口に入れるのだけはやめてよね」
「う、うん。気をつける」
「そうだ、珍しい京菓子があるけど食べる?」
家康はそう言うと、袂に手を入れごそごそと探り出した。
「えっ、食べたい!どんなお菓子!?」
気になって身を乗り出すと............
「はぁ〜、人の話聞いてた?」
貰えたのは、お菓子ではなく大きなため息。
「え?」
「だから、何でもそうやって食べ物に釣られない様にしなよって言ったでしょ?」
「えっ、京菓子があるってのは?」
「無いよ。あんたを試しただけ」
「えーっ!酷いっ!何が出てくるか楽しみにしてたのに」
辛党の家康がどんなお菓子を食べるのか興味があったのに.....