第27章 逢引き
「それにしても、よく決心したな」
「え?」
「信長様ほどではないが、俺だってお前がこの城に来た時からずっと知っているし見てきたつもりだ。そんなお前がこうやって立派に打掛を着て信長様の為に頑張ってる姿を見る事ができるなんてな。信長様の事、頑張って支えてやってくれ」
お茶を片手に優しく微笑むと、近くに座る私に手を伸ばし、ぽんぽんっと頭を撫でてくれた。
「........っ、ありがとうございます」
出会った頃の態度が強烈だっただけに、今のこの優しさはとても身に染みる。
「頑張れよ。何か困った事があればいつでも力になるからな」
「はい。これからも宜しくお願いします」
もう半ば、兄を超えて父の様な言葉をもらい、私は秀吉さんの部屋を後にした。
・・・・・・・・・・
「家康?空良だけど、......いる?」
次は家康の部屋へ。
ここはよく薬の勉強に来てるから、いつもの調子で開けそうになった所を麻に素早く止められ、廊下から声をかけた。
待つ事少し......
「.....何?いつもみたく入って来ればいいのに」
面倒くさそうな顔の家康が襖を開けて出迎えてくれた。
「あ、......ごめんね。今日はちょっと、打掛を着て歩く練習中で.....」
「ふーん............って言うか、それって練習する事だったんだ?....あんたって、何かいつも大変だね。........で、なんか用?」
「あ、うん。.....喉が乾いた頃だと思って、お茶を........、忙しかった?ごめんね?」
いつも素っ気ないけど、今日は何だかいつも以上に素っ気ないと言うか、機嫌が悪い?
「...........そう。じゃあ入れば?」
「え、いいの?」
「そのつもりで来たんでしょ?」
ぷいっと顔を背けると、家康は襖を広く開けてくれ、部屋へと入って行った。
「失礼します。麻、お茶を.....」
「はい」
私の後ろから付いて来た麻が、私の横に膳を置いて後ろへと下がった。
「どうぞ...」
その膳の上で淹れたお茶を手に取り家康の前へと置く。
「...........無理が打掛着て歩いてるみたい」
「っ.............」
中々に辛辣な言葉が家康の口から出てきた。