第27章 逢引き
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「秀吉さん、空良です。お茶をお持ちしました」
お茶を淹れる急須や湯呑み一式を携えた私は、秀吉さんのお部屋の前に一番にやってきた。
麻には、「信長様が一番ではないのですか?」と聞かれたけれど、信長様を一番最初にしてしまうと、もう皆にお茶を持って行く事は不可能となりそうな予感がして.........、
「う、うんっ、驚かせたいし、楽しみは一番最後にとっておきたくて」と誤魔化し、信長様は一番最後にしてもらった。
「おう、入っていいぞ」
秀吉さんの声が聞こえて襖を開けようとすると、
「空良様、私が」
私を止めた麻は廊下に膝をつくと、手に持つ膳を一旦廊下に置き襖を開けてくれた。(こんな姿もとても優雅だ......)
「私がいる時は、必ず私がお開け致しますので、空良様は襖に触れてはなりません」
ピシャリと指導が入った。
「は、はい。ありがとう」
今までは自分が侍女で逆の立場だっただけに、この状況に慣れるにはとても時間がかかりそう。(流石に実家の侍女達はここまでではなかった.......)
「おっ、その格好どうした?似合ってるな。正月以来か?」
文机に座っていた秀吉さんは、いつもとは違う私の出立に気付き褒めてくれた。
「秀吉さん、ありがとうございます。今、信長様と京に行く練習中で、まずはこの打掛に慣れようと思って........それで、その練習も兼ねて皆様にお茶をお淹れしようと....」
「そうか、わざわざ悪いな。ちょうど喉が乾いて休憩しようと思ってたところだ」
安土一のモテ男(小夜ちゃん情報)は、私の話を聞くと優しい笑顔で答えてくれた。
「良かった。お茶、ここに置きますね」
「おう」
秀吉さんの座布団が置かれた前にお茶を置くと、秀吉さんも文机から立ち上がり座布団に腰を下ろした。
「............ん、上手い。お前の淹れるお茶はいつも美味いな」
湯呑みをぐいっと傾けて一口飲み、優しい言葉をくれる。
「ありがとうございます」
秀吉さんのこういった優しい所は、私の兄にとても似ている。