第26章 共に歩む道
「出来なくとも構わん。頑張った事が貴様の自信となり、そんな貴様に俺はまた心を奪われるだけだ」
「信長様.......」
「できることなら、貴様をこのまま天主に閉じ籠め外敵から護り、大切にと思っておったが、それでは貴様の心が晴れぬし自信が持てぬのだと分かった。であるなら、例え試練の道だとしても共に歩き進もうと思ってな」
「........本当に、私で良いんですか?」
「何を今更..........。俺の愛する女も、妻とする女も、貴様しかおらん。俺は、貴様しか欲しくはない」
「っ.........」
再び流し始めた空良の涙を拭いながら、俺はもう一度、同じ質問をした。
「空良、俺のただ一人の妻となり、生涯を共にする覚悟はあるか?」
「っ.....覚悟は....まだありません。......でも、頑張ります。皆んなに認めて頂けるように、私自身が胸を張って、っく、私は、信長様の妻だと言えるように、強くなりたい.....です」
「俺が貴様を守る。案ずることはない」
「じ、じゃあ私は.....数多の女の人たちから信長様を守ります」
「ふっ、これでもう浮ついたことはできなくなりそうだな」
「っ、そうですよ!もう、どんなに綺麗な人に誘われてもダメですからね!」
「肝に銘じておく」
俺にとって、この世の誰よりも綺麗な女は貴様なのだと、この目の前の惚けた女は一生気づかんのであろう。
「約束など、不確かなものはしない主義であったが、貴様とは約束を取り交わしたい」
「約束?...何かの書面に...名前を書くと言う事ですか?」
不思議そうに小首をかしげる空良の耳の後ろに手を差し込み視線を合わせる。
「書面などいらん。伴天連どもの国では、将来を共にすると誓い合ったもの達はこうするそうだ」
「?.........どうするんで.........んっ」
差し込んだ手で奴の顔を引き寄せ、ゆっくりと唇を合わせた。