第26章 共に歩む道
「相変わらず暴力的な女だ。しかも強情で泣き虫で..........。こんな女を愛せるのはこの日ノ本を探しても俺しかおらん。空良、俺にしておけ」
「ううっ、でも、怖い............。強くなりたいのに、怖い......私には、地位も名誉も家族も.....信長様の後ろ楯になる様なものは何もないから..........このまま正室になったとしても、信長様を不幸にしてしまいそうで...........でも、他の姫君と過ごす信長様にも耐えられない......うううっ......」
(やっと.......聞けた。)
「それが貴様の本心か.......」
褥に押さえつけた華奢な身体を抱き起こし抱きしめた。
「空良、貴様に見せたいものがある」
抱きしめる腕を解いて、泣き止みそうのない空良の手を取り文机へと連れて行った。
「これを見よ」
机の上に、バサッと一枚の地図を広げて見せた。
「?グスッ......?」
「この、赤の墨で塗られた所が、俺がまだ元服したばかりの頃の織田の領地だ。那古野、古渡、清洲と書いてあるのは、俺に縁のある城の名だ」
じっと地図を見つめ、俺の話に耳を傾ける空良に、もう一枚、別の地図をその上に重ねて見せた。
「そしてこれが、今の織田の領地だ」
「...........すごい.......」
空良は泣くのをやめて、ごくりと息を呑んだ。
「俺は元々、尾張の小さな国の城持ちに過ぎなかった。貴様の父とさほど変わらん。だが、小さな国にも小競り合いが日々起こり、隣国の脅威に脅かされる日々だ。騙し騙され、奪い奪われる。そんな事を繰り返していて国が栄えるはずがない。だからこそ、こんなくだらぬ争いに終止符を打とうと立ち上がりここまで来た。朝廷や幕府の輩とて、初めは俺を尾張の田舎者扱いで酷いものであったが、今漸く、対等に渡り合えるようにまでなった」
「信長様の、頑張って来られた証ですね」
空良はそう言うと、机に広げた地図を指でなぞった。