第26章 共に歩む道
「ふっ、覚えておらんか?俺が、貴様を近く正室にすると言った件だ」
「.....あ、.........」
寝起きの顔は途端に現実味を帯びてキュッと引き締まった。
「どうした?」
「あの、覚えてます.............」
戸惑った顔は俺を見つめたまま口をつぐんだ。
「お得意のだんまりか.......」
そうであった.....
恋仲となり、気持ちを通わせ合った後でも、愛しているの囁きには応えるものの、空良はいつだって俺の本気の問いかけには、口をつぐみ答えてこなかった。
「俺の言葉が信じられんか?」
「そんな事はっ!」
「ならばなぜ俺の問いに答えぬ?」
「それは.............」
膝に置いた両手をキュッと握りしめる空良に、正室の件を受け入れているわけでは無いと分かる。
「思っている事をはっきりと言え。今更貴様の本音を聞いた所で怒ったりはせぬ」
「う、嘘っ!だって昨夜も.......」
途端に顔を赤らめごもごもと口籠る空良。
昨夜、俺が容赦なく空良を抱いたのは、怒ったからと思っているのだろう..........
俺が貴様を抱くのは愛おしい故だと、いつになったら理解するのか......
「昨夜がなんだ?あれぐらいで根を上げられては困る。俺の妻となったら、あれぐらいではすまさん」
「えぇっ!?」
困惑の表情で叫び声を上げる空良が可笑しくて、愛おしくて仕方がない。
空良の手を取り耳元に悪戯に囁く。
「恋仲と妻とでは抱き方が全然違う。あんなものでは無いぞ?知らぬのか?」
「し、知りません......そんな事、誰も教えては......」
恋仲であろうと妻であろうと愛おしい者を抱くのに違いなど無いが、色恋沙汰に疎い女はありとあらゆる事を、想像の追いつかない頭で考えておるのだろう。
驚き狼狽える空良の手の甲にそっと口づけた。
「っ.........」
今度は真っ赤だ......。
出会った頃は顔を赤くする事はあれど、必死で耐える様な顔ばかりであったのが、ここ最近はころころと様々な表情を見せる様になって、目が離せない。