第26章 共に歩む道
「どうすれば、貴様は安心して俺だけを見つめる様になる?」
正室など、形式だけのものなど、どうでも良い。
俺の隣で笑う貴様が見られるのなら、それだけで俺は満たされ良かったのだが、貴様の心はそれでは穏やかではいられない。
「本当に貴様は、俺を焦らせる悪女だな」
俺の腕の中にいる時は、柔らかで甘く俺を暖める存在だが、一たび目を覚ませば、俺を様々な方向から攻めて焦らせる。
俺の気も知らず眠るあどけない寝顔に口づけると、ピクッと瞼が動いた。
「ん............」
身じろぎながらゆっくりと目を開けた空良と目が合った。
「........あ、......信長様......?」
「目覚めたか」
「......はい.......私、寝坊してしまって.....」
「いや良い。昨夜は無理をさせたからな」
「.............っ」
奴の顔の輪郭を指先でなぞり、揶揄う様に言うと、奴は途端に頬を赤く染めた。
「少し話がしたい。起きられるか?」
「は、はい」
気怠そうに起き上がる空良の身体に手を添えて手伝ってやる。
「ふっ、辛そうだな」
己で蒔いた種とは言え、腰をさすり辛そうに起き上がる空良に些か同情してしまう。
「.....っ、誰のせいだと思ってるんですか!?」
恨めしそうにジトッと睨んでくる空良に笑いが込み上げる。だが、それほどに昨夜は感情を抑える事が出来なかった。
愛らしく俺を睨みながらも居住まいを正す空良を真っ直ぐに見つめ、俺は口を開いた。
「昨日俺が言った事だが、貴様はまだあれが夢だと思うか?」
「?........」
俺の質問に対し何の事か分からず、空良はキョトンと頭を傾げた。