第26章 共に歩む道
苛立ちをぶつける様に深く探れば、分からずやな女の唇は悔しいほどに甘く、俺の理性を簡単に奪っていく。
突然の口づけに驚き強張った身体が徐々に緩んで行く事が分かってはいたが止められない。
「っん、..............ん、」
悩まし気な声を漏らす空良に更に煽られ、幾度となく角度を変えては、甘く柔らかな奴の唇を貪った。
「っ........はぁ、.........はぁ、.......っ、信長様......」
こんなにも蕩けた顔をする癖に、一体どんな思いで俺の側にいたと言うのか....
言いたい事は山ほどあれど、先ずは目の前のこの男から片づけねば....
「日置嘉正.....と言ったな」
............その後、嘉正との話の中で、祝賀会での事が既に空良に知られている事が分かり、俺は空良の前で奴を正室にする事を宣言した。
そんな俺の言葉を聞いて、空良は放心した様に、俺の顔をジィーーっと見つめてきた。
「ふっ、何だ、そんなに見つめて......また俺のカッコよさを再認識しておるのか?」
照れ隠しの言葉というのを、俺はこの時初めて使った。
「......聞き、まちが...い?」
「は?」
「だって......今.....変な事........言った?」
余程俺の言葉を信じられないのか、空良の反応はまたしても俺の予想を超えてくる。
「貴様......俺の言葉を変呼ばわりするとは、相変わらずいい度胸だ」
貴様と出会うまでは、己の生涯でする日は来ぬと思っていた俺の求婚を、変な事と一蹴しおって...................
「俺を信じろと言ったであろう?」
「っ............言った....、けど......」
「けど?.......何だ?」
「っ、.............夢?ここに来ることだって、秘密にしてたのに.....」
大きな瞳が、様々な感情で揺れているのが分かる。
生涯貴様を守り、愛し、幸せにする事は、俺の中では当たり前にこれから行っていくものだと思っていたが...、
貴様はこれを夢だと思い信じられぬ程に、自らが置かれた現状に追い詰められていたのだな......