第26章 共に歩む道
「っ.......」
........心の臓を、鷲掴みにされるとは、こういう気持ちを言うのだろうか.....?
俺を信じると、側にいたいと言った奴の言葉に己の心は一瞬擽ぐられたが......
遊ばれていたとしても?
飽きられる日が来るとしても?
日々俺の隣で幸せだと言いながら、そんな日が来ると、貴様は思っていると言うのか?
僅かでもいいから側にいたいと、そんな言葉を空良に言わせているのは俺自身だ。
空良の根底にある不安は、全て俺自身が与えているものであると知り、愕然とした。
「...........ダメだ」
嘉正の声でハッと我に帰り見ると、嘉正は険しい顔をして空良の手首を掴んでいる。
「やっ!」
「空良、お前は越前に帰って俺と一緒になるんだ」
「離してっ!」
「俺達は運命で結ばれてるんだ。来るんだ空良!」
「やっ、ヤダっ!行きたくない!.........離してっ!」
..........ふつふつと、怒りが沸き起こる......
だがこの怒りは、空良を運命の相手だと勘違いして連れて行こうとする嘉正に対してか?
それとも、一向に俺に助けを乞わぬ空良に対してか?
空良........貴様は、なぜ俺の名を呼ばぬ?
貴様のその強情さと思慮深さは、時に残酷だと言う事になぜ気づかぬ!
「空良、手荒な事はしたくない。俺と来るんだ!」
嘉正は懐に手を入れて、小さな陶器を取り出した。
「っ.............」
(ここまでだ!)
「い、嫌っ!のっ、信長様っ!信長様ぁっ!」
助けに出ようとした矢先、奴は漸く俺の名を呼び助けを求めた。
「..........阿保が。......やっと俺の名を呼んだか」
俺が突然現れ、驚いた顔をする空良
「の、信長様っ!?」
嘉正の手を思いっきり振り払い、俺の元へと全力で駆けてくる姿に愛おしさが込み上げる。
「信長様っ!」
「貴様はいつも、肝心な所で遅い!」
何故俺を頼らぬ!名を呼ばぬ!もっと甘えぬ!
「どうしてここが......っん!」
煩い!
「んっ、..........、.....ん.....」
唇を奪い小さな舌を絡め取った。