第26章 共に歩む道
「で、でも、妻にしたいって言って下さったから、いずれは側室にはって.......思って........」
(........は?.........側室だと!?)
空良の口から出た側室という言葉.......
俺が、奴以外を正室に迎えるとでも思っているのか.........?
奴の言葉に驚いている間にも、嘉正は更に空良を追い詰めていく。
「そんな言葉を信じてるのか?武将なら、しかも天下の大名様なら一時的に気に入った女になら簡単に言う言葉だっ!」
「そんな事!」
「ないって言えるのか?」
「それは......」
奴はまた言葉に詰まったが、何かを己に言い聞かせるよう言葉をポツリと紡ぎ出した。
「私は、信長様を信じてる」
「泣かされるだけだ!正室になんて絶対になれないし、側室にだってなれない。今は、純粋無垢だった田舎育ちの空良が珍しいだけだ。そのうち飽きられて捨てられるに決まってる!」
「そ、それでもいい」
「空良っ!」
「だって.......、ずっと、...ずっと暗闇の中にいたから....」
「.......何?」
「嘉正様は、私を純粋無垢だと言ってくれるけど、本当の私はそんな綺麗な心は持ってない!」
「何、言ってるんだ?」
「あの屋敷が夜襲に遭った後、ずっと暗闇の中を死んだ様に生きて来たの。復讐と言う黒い感情に支配されて苦しくて、とても寂しくて........。そこから救い出してくれたのは信長様で、復讐に心を染めた私でもいいと言ってくれた」
それは真の事だ。
出会った当初から、どんな貴様でも構わない程に、俺は貴様に惚れている。
「色々な事があったけど、私は信長様を好きになって、信長様も私を好きだと言ってくれた。だから、遊ばれていたとしても、飽きられる日が来るとしても、信長様が側にいてもいいと言ってくれる間はたとえ僅かでもいいから側にいたい。嘉正様とは一緒には行けません!」