第26章 共に歩む道
「信長様は、いつ見てもカッコいいですね」
酷い顔などといわれ、てっきり怒るであろうと思っていたのに、言われた言葉はカッコいい.....
「何だ、....今頃気付いたのか?」
こんな言葉一つで俺の心が躍る事を、貴様は知らんのだろう。だが今日はこの言葉で浮かれている場合ではない。
「今日の予定はどうなってる?」
答えぬとは思うが、一応聞いてみる。
「いつも通り、掃除と小物作りです」
「例の許婚とは、もう会わぬのか?」
「はい。....もう、越前に戻ると言ってました」
「そうか.......、やけにあっさりと戻るんだな」
俺が日頃から、どれだけ貴様を思い見ているか知らぬであろう?心の奥底までは読めずとも、貴様の嘘くらいは見抜ける。
「それよりも早く行かないと、みんなお腹空かせて待ってますよ?」
あまり深く追及されたくないのか、俺の手を繋ぎ歩こうとする空良を再び止めた。
「空良待てっ!」
「っ、信長様?」
(俺の、何を不安に思っている?)
揺れた瞳で俺を見る空良にいても立ってもいられず口づけた。
「んっ.....!」
「空良、........俺を信じろ」
「え?」
「周りの戯れ言に惑わされるな。俺だけを信じろ。貴様の帰る場所はここで、俺の腕の中で、俺は貴様を絶対に離さん!」
「っ.............」
俺の言葉が届いたのか、奴の心の揺れを感じ取った。
「も、もし離れたら.........?」
強請るような顔に、まだ何かを言って欲しいのだと悟る。
「なんだ.....?離れる予定でもあるような口ぶりだな」
戸惑いを隠せない顔を見せる空良にふと、俺から離れる気でいるのかと、新たな疑問が浮かんだ。