第26章 共に歩む道
腕の中の強張りが解け、わずかな重みを感じて覗くと、空良は涙を流したまま眠りについていた。
着物を脱がせ、襦袢一枚にして褥へと寝かせる。
城下にいるであろう日置嘉正を捕らえ、空良に何を言い何をしたのか、洗いざらい吐かせるつもりであったが、原因が己にあると分かった今、その必要はなくなり、そのまま愛しい者を抱きしめて眠る事にした。
空良が俺に抱える不安とは一体何だ?
お互いの気持ちは同じ筈だ。
強いて言えば、俺の空良への束縛が激し過ぎる所位か?だがそれとて今更だ。
奴が俺に対して遠慮することと言えば、身分の事だが、それは慣れろとしか言いようがない。
他者の気持ちなど考えたことのない俺にとって、例え愛しい者の心とは言え、推し量るのは容易では無い。
結局、解決の糸口すら掴めず眠りにつけぬまま朝となり、空良が腕の中で目覚めた。
「起きたか?」
「あ、信長様.........起こしてしまってごめんなさい」
「いや、構わん」
腕の中でもぞもぞとする空良が愛おしく、頭を撫でながら額に唇を押しつけた。
愛おしいと言う気持ちは不思議なもので、気がつけば奴のどこかしらに口づけてしまう。
「あの.......、もしかして、昨日このまま一緒に?確か急なお仕事が入ったって......」
やはりそう来たか。俺の気が変わり仕事には行かなかったと言った所で、奴は己を責めるだろう。
「あのまま一緒に眠ったわけではない。貴様が眠りについた後で仕事には戻った。気に病むことは何もない」
手触りのいい奴の髪を梳きながらそう答えると、奴は少しほっとした顔をして話を続けた。
「.........そうなんですね.......でも、昨夜は取り乱してしまって、ごめんなさい」
「泣きたい時に泣ける様になっただけマシだ。顔を見せろ」
顎を救い上げ目を合わせると、泣き腫らした目が俺を見つめた。
「ふっ、酷い顔だな」
どんな顔も可愛いが、この泣いた後の腫れた目で見つめられると堪らなく虐めたくなる。