第25章 試練〜試される心〜
「俺を信じろと言ったであろう?」
「っ............言った....、けど......」
「けど?.......何だ?」
「っ、.............夢?ここに来ることだって、秘密にしてたのに.....」
いきなり現れて助けてくれたり、正妻にすると言ったり........、何もかもが出来すぎていて......信じられない。
「ふっ、俺に嘘をつきその身を危険に晒した事については仕置きものだが........これが夢かどうかは、貴様自身で確かめろ」
「えっ、......っ」
頬を撫でる大きな手にそのまま引き寄せられると、形の良い唇と重なった。
「..............んっ....」
長くて甘い口づけの息苦しさが、これが夢ではなく現実であることを伝えてくれる。
「......どうだ?」
「ゆ、夢じゃあ、ありません」
「そうか......」
「で、でもっ、私を正妻にって、本気で........?」
聞き間違いじゃないよね?
「初めての酒は、輿入れをした先の相手と酌み交わすのであろう?それは俺だと言ったはずだ」
「あ、......」
それは、お酒を勧められた時に私が信長様に言った言葉.....
「そ、そんな言葉を覚えてっ?」
「ふっ、漸く、酒に色づく貴様を見れそうだな」
「っ...........」
不敵に笑うこの人に、敵う日はきっと来ないんだろう。
「よ、酔って手がつけられなくなっても知りませんからね」
「貴様ならあり得るな。しかもタチが悪そうだ」
「もう、ひどいっ!」
ポカポカと、意地悪を言う信長様の胸を叩いていると、
「空良........」
嘉正様に名前を呼ばれ、浮かれている場合ではないことに気づき、慌てて信長様の胸を叩く手を止めた。
「嘉正様.......」
嘉正様は私と信長様の前に立つと深くお辞儀をした。
「空良の事を、宜しくお願いします。必ず幸せにしてやって下さい!」
「っ、嘉正様.........」
「貴様に言われずとも、空良は俺が必ず幸せにする」
「ははーっ!」
どんな気持ちで頭を下げてくれているのかなんて、私に考える資格なんてない。でも、更に深く頭を下げた嘉正様の元へ行き、手を取った。