第25章 試練〜試される心〜
「起きたか?」
「あ、信長様.........起こしてしまってごめんなさい」
「いや、構わん」
私の頭を撫でると、おでこに唇が触れた。
そう言えば、昨夜は信長様の胸で泣きじゃくりそのまま寝落ちしてしまった.......?
「あの.......、もしかして、昨日このまま一緒に?確か急なお仕事が入ったって......」
(また、迷惑をかけてる?)
「あのまま一緒に眠ったわけではない。貴様が眠りについた後で仕事には戻った。気に病むことは何もない」
私の髪を梳きながら、信長様は優しく答えてくれる。
「.........そうなんですね.......でも、昨夜は取り乱してしまって、ごめんなさい」
「泣きたい時に泣ける様になっただけマシだ。顔を見せろ」
ぐいっと顎を救い上げられ視線が合うと、力強く人を惹きつけて離さない目に吸い込まれていく。
(ああ.....、本当に好きだなぁ)
「ふっ、酷い顔だな」
まだ鏡を見ていないから分からないけど、昨日あんなに泣いたんだもの、それはそれは泣き腫らした目で酷い顔なんだろう。
そんな私の顔を一目見るなり信長様はククッと笑った。
「信長様は、いつ見てもカッコいいですね」
私の好きになった人は本当に綺麗で、いつも自信に満ち溢れている。
「何だ、....今頃気付いたのか?」
信長様は片眉を上げて少し驚いた表情を見せる。
「ふふっ、そうですね。今頃気が付くなんて、遅いですよね」
本当に、あなたを失う事の怖さが、目の前に迫ってきてやっと気づくなんて.......
「酷い顔だが少しはスッキリしたようだな」
「はい」
心はまだ痛いし気持ちは揺れてるけど、いっぱい泣いて、沢山の愛情をもらったから大丈夫。
「少し早いが起きるか」
「はい」
寄り添い合っていた身体を離して布団からでると、お互いに朝餉に行く支度をした。
当たり前の日々は、ある日急に当たり前じゃなくなってしまう。だからこそ、今あるこの時間を大切に過ごさなければ.....