第25章 試練〜試される心〜
..........あれは、いつのことだったか?
母上に、父上との馴れ初めを聞いた時.......、私も許婚の嘉正様とこんな夫婦になれるだろうかと聞いたら母上はこう答えられた。
『ふふっ、空良は私に似ているから、もしかしたら同じように他の誰かに恋をするかもしれませんね』
既に決められた許婚がいながらも、父上と恋に落ちた母上は、その頃のことを思い出しているかの様に遠くを見つめた。
『えーーー、でもその時は、母上は認めて下さるんでしょ?』
何も考えていなかった私は母上なりの冗談だと思い、その時は笑いながら聞いたことを覚えてる。
『勿論よ。私には、あなたが私の様に強く望まれ愛される姿が見える。それは許婚の方かもしれないし違うかもしれない。けれど、あなたもその方を愛し幸せであるのなら、私は何も言う事はありません』
『母上.......』
『空良、幸せになりなさい』
・・・・・・・・・
「.................母上?」
目を開けると、そこはいつもの光景で.....、既に外は明るくなりかけていた。
久しぶりに見た母上の夢......。思えば、私が苦しい時には、いつも母上は夢に出てきて励ましてくれた気がする。
『幸せになりなさい』
そして最後には、いつもこの言葉を言ってくれる。
私を命懸けで生かしてくれた母上達の分も幸せになろうと思えたのは、信長様に会って生きることを教えてもらったから.....。
見上げれば、信長様が私を抱きしめて眠っている。
この日常が当たり前じゃなくなるのかと思うと...今も胸が張り裂けそうだけど.......、離れるという選択肢は私には選べそうもない。
(好きです。.....大好き......)
心の中で呟き、少しはだけて露わになった逞しい胸元にそっと口づけた。