• テキストサイズ

叶わぬ未来の夢を見る【イケメン戦国】

第3章 侍女の仕事



気づけば、信長の手はいつの間にか私の手から離れていて、床に置かれている。


この紐を引っ張っているのは間違いなく自分なのだと気づく。  


殺されかけていると言うのに、私の下で寝転がる男は、動じる事なく私を見つめ続ける。

「っ、見ないで.........」


視線に耐えきれず、紐を引く手に力を込め一気に引っ張った。


「............っく..」

紐は一気に信長の首に喰い込み、信長は僅かに目を細めて苦しそうな声を漏らした。


(はっ!)

呻き声で我に返り手を離し、慌てて信長から飛び降りて壁にぶつかるまで後ろへと下がった。



「あ、...............私........」 

小刻みに震える自分の手を見ると、紐を握っていた部分が真っ赤になって汗ばんでいる。
それだけ.......力を入れたという事だ.....



「どうした....殺らんのか?」

信長がむくりと起き上がり、首に巻かれた紐を取った。


「あ............」


うっすらと、信長の首には紐の跡が付いている。

私が........殺そうとした痕だ......



「っ..............」

人を.....殺そうとするとは、こう言う事だ....
分かっていたけど、分かっていなかった.........

本能寺の夜、この男を殺そうと思ったのは本心で、今だって、目の前で不適に笑うこの男を殺したい。

でも.............


『俺が信長様に仕えて以来、初めて誰かをお側に置くと仰ったんだ。信長様は日々の激務で大変お疲れだ。侍女として信長様によく仕え、お疲れを癒して差し上げてくれ』


昼間、秀吉さんに言われた言葉を思い出す。


こんな男でも、大切に思っている家臣がいる。

僅かな時間でも、共に過ごしてこの男の事を少し知ってしまった事は失敗だった......

本能寺の時と仇を討ちたい気持ちは変わらなくても、殺す事に躊躇う気持ちが生まれてしまった.......




「................貴様の負けだ」

気づけば、信長が目の前にいて私の両手首を掴んでいた。






/ 679ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp