第23章 姫の反乱
〜翌日〜
朝餉にやって来た信長はご機嫌だった。
「信長様、空良の様子は如何ですか?」
昨日天主で聞いた嬌声のことには触れず、家康は問いかけた。
「ああ、奴なら今はぐっすりと眠っておる。まぁ無理もない」
ククッと笑う信長は艶々と上機嫌に答えながら出汁を啜った。
「そうですか」
おおよその見当がつく家康はそう答えるしかできず、自分の席へと戻った。
食事を始めてしばらく経った頃......
「信長様ぁ〜」
大広間の襖がゆっくりと開き、先程信長が着せたばかりの寝間着姿の空良が、顔を出した。
「「「ぶっ!!!」」」
食べていた(啜っていた)物を口から吐き出したのは、信長、秀吉、家康の三人。
「おっ!」
「おやおや...」
分かりやすくニヤリと口の端を上げたのは、事の真相を知らぬ光秀と政宗。
「空良」
碗を置き襖まで早足で行く慌てた信長を見たのは皆初めての事。
「信長様ぁ、ここにいた」
信長を見ると愛らしく微笑む空良は皆の目も憚らず抱きつき口づけた。
「空良、その様な姿でうろつくな」
口を離して信長は空良の姿が皆に見えない様に襖の前に立った。
「ふふっ、変な信長様。いつもはあんなに皆に見せてやればいいって仰ってるのに」
空良は信長の話を笑って聞き流し再び口づける。
「信長様大好き。早く、天主に戻りましょう?一人は寂しいの」
「っ................」
((((堕ちたな........))))
と武将たちは心の中で思った。
「ふっ、仕方がない。まだ抱き足りぬならいくらでも付き合ってやる」
信長は空良の膝裏に手を入れ抱き上げた。
「秀吉、今朝の軍議は貴様がまとめておけ」
「はっ?ですが......」
「俺は空良の看病で忙しい。報告書にだけ目を通す。分かったな」
パタンと襖を閉めて、信長は空良を連れて広間から出て行った。