第23章 姫の反乱
「はぁ〜。空良の事になると誰彼構わず疑うのをやめて貰えますか?着替えは女中たちにやらせましたし、俺はその間部屋の外にいました」
「ならいい。どの道解毒剤もないのならここにいても仕方あるまい。天主に連れて帰る」
布団をめくり、空良を抱き上げた。
すやすやと規則正しい寝息を立てて眠る空良はいつも通りに見えるが.......
「起きたらたくさん水を飲ませてなるべく中和させて下さい。変な症状が出たらすぐに知らせて下さい」
「分かった」
俺はそれだけ言うと、家康の部屋を出て天主に空良を連れ帰った。
・・・・・・・・・・
空良を布団に寝かせ水を口移しで何度か飲ませた後、俺は再び書状に目を通した。
「信長様。秀吉です」
「入れ」
山の様にあった書状に目を通し終わろうとした矢先に、秀吉が新たな書状の山を手に持って入ってきた。
「またか。どれだけ俺を書状漬けにするつもりだ?」
「申し訳ありません。ですが本日はこれで終わりですので」
全くもって申し訳なさそうに見えぬ秀吉は、俺の文机に大量の書状を置いた。
「そう言えば、空良の事聞きました。大丈夫ですか?」
隣の部屋で眠る空良を秀吉はチラリと見た。
「分からぬ。人により症状も違うと聞いておるからな。とりあえずは目覚めぬ事にはなんとも言えぬ」
そう答えながら、俺も空良に視線を移す。
「うーん.......」
空良が寝返りを打った。
「起きるやも、しれんな」
立ち上がり空良の元へと行くと、目をうっすらと開けた。
「空良」
名前を呼ぶと、ゆっくりとこちらに頭を向け視線が定まるのを待ち、俺と分かると愛らしく微笑んだ。
「信長様」
覗き込む様に空良を見る俺に手を伸ばすと、ぎゅっと俺に抱きついた。
「空良?」
(珍しいな)
「信長様、大好き」
ちゅーーーーーーーっと、それは長い口づけをしてきた。