第23章 姫の反乱
「これは、どう言う事だ?」
天主で書状に目を通していると、家康が呼んでいると女中が急いでやって来た。
普段であれば、用事があれば必ず家康からやって来るものを、その女中の落ち着かない態度も腑に落ちず家康の部屋まで来てみれば、空良がその部屋に敷かれた布団に眠っていた。
「確か今日は貴様の部屋の掃除を手伝うと言っておったが、ここで寝るとは聞いておらんぞ。貴様、もしや.......」
「そんな事あるわけないって信長様が一番分かってるでしょ?」
家康は軽くため息を吐き、俺に赤い薬壺を差し出した。
「何だこれは?」
渡されたのは、中身のない空の薬壺。
「その中身を全て空良が頭から全身に被り、口周りについた粉は舐め取ってしまいました。今眠っているのは、恐らく口以外にも鼻から摂取した薬の作用だと思います」
「して、中身は?」
「これです」
「きのこ?見た事のない種類だが、毒か?」
家康の落ち着き具合からして空良に大きな害は無いと分かるが、ただ事では済まなそうだ。
「毒きのこの一種なのは確かですが、死に至る毒性ではなく、自白作用が強く出るきのこです。まだ試験段階ですが、他の薬と混ぜ合わせて、間者を捕まえた際、苦痛を与える事なく自白させる薬として使おうと考えていました。........ただ、」
「ただ、何だ?」
「自白作用以外にも、催淫、睡眠作用が強く出る事もあり、尋問できなくなった事もあったので、あくまでも試験段階の状況です」
「では空良は、その睡眠作用が働いていると言う事か?」
「壺の中身全てを全身に被りましたから、かなりな睡眠作用が効いてはいると思います。ただ、起きた時にどうなるかが未知数で.......」
「解毒剤は?」
「ありません。それに見合うものも探せていません」
「そうか...........」
布団で深い眠りにつく空良を見てある事に気づく。
「全身に粉を被ったと聞いたが、嫌に綺麗な身なりをしておるな。まさか貴様が着替えさせたのか?」
本来なら、頭の先から爪先まで全身粉だらけなはずだが、綺麗に粉は払われて、今朝見た着物とは違い、寝間着になっている。