第23章 姫の反乱
「全然違うけど、まぁあんたには分からないよね」
「うん」
「変わったの感じ取り方は人それぞれだと思うけど、あんたが来てからは、早朝から起こされて鍛錬に付き合えってのは無くなったし、あの人にしては珍しく休みも取る様になったから、俺としてはそこも助かってるけど............一体どうやってあんな眠りの浅い人を眠らせてるわけ?」
当時は本当に困ってたって顔をしながら、家康は私に問いかけた。
「えっ、それは.......」
眠って......いない様な....いる様な...?
大体において、私はいつも途中から記憶が無い事が多いから、その後の信長様を知らない。
でも、目が覚めると腕の中で信長様も寝ているから、やはり寝ている.....かな?
「もういいよ。その赤くなった顔で、大体の予想がついた」
「あっ、.......うん」
家康が恥ずかしそうに言うから、私もごにょごにょと口籠ってしまう。
しーーーーーんと静まり返った部屋はとても気まずい。
「あっ、この薬壺もこの棚だっけ?」
体を動かして気まずさを払拭しようと手に取ったのは、触るなと言われたあの赤い薬壺の一つで.....
「空良っ!それは触るなって!」
棚に置いた途端に家康が大きな声で叫び、
「えっ?」
その声に振り返った瞬間、ちゃんと棚に置かれていなかった薬壺は私の手から逆さを向いて滑り落ち、
「空良っ!」
家康の叫びと同時に私の頭の上に落ちた。
バサっと、粉状に挽かれた薬が私の頭から全身に降り注ぐ。
「わっ、家康ごめんね。薬が、.......こぼしちゃった」
「そんな事はいいから、動かないで」
「うん。でもこれって何の薬?」
すっかり赤い薬壺だと忘れていた私は、口の周りについた粉をペロリと舐め取った。
「空良っ!」
「えっ?」
目の前で、家康が必死の形相で叫んでるけど、
「................あ......れ?」
視界がグニャリと歪んで立ってられない。
「いえ...やす?......なんか、へ、ん」
「空良!」
私の記憶はそこで途絶えた...........