第22章 初めてのお買い物
許可をもらった私は、次の日小夜ちゃんと一緒に城下へとお出かけをした。
先ずは呉服屋さんへ行き、新たに作った小物も買い取ってもらい、今後の仕事の依頼も同時に受けて、材料を受け取った。
その後は人気だと言う甘味屋さんへ連れてってもらい、自分の稼いだお金で団子を食べて、お土産を買った。
護衛を付けると信長様は言っていたけど、私達の目に見えない様にしてくれていたのか、全然その気配を感じる事はなく、初のお友達との外出は楽しく終わり、私はご機嫌で天主へと戻った。
「ただ今戻りました」
天主の襖を開けると、信長様は文机に座って書簡に目を通している最中。
「その緩んだ顔を見るからに、楽しめた様だな」
書簡を読む目を私に向けて、信長様は目を細めた。
「はい。私の小物をまた買って頂いて、後、仕事の依頼も受けて来ました」
手に持つ風呂敷に包んだ材料を信長様に見せる。
「そうか、良かったな」
信長様はその風呂敷を私から取ると文机に置いて、私の手を引き寄せ膝の上に座らせた。
「あっ、信長様にお土産も買って来たんです」
「土産?俺にか?」
「はい」
「俺にまで買っておったら女中への茶菓子は買えぬであろう?」
「それは.......、これから仕事をしてまた収入を得られた時に買いますから。初めての収入は、信長様に日頃のお礼をしたくて......、って言ってもお団子ですけど」
日々信長様から頂く物と比べる事なんて出来ないけど、これが私の今出来る精一杯の事だから。
「団子か。ちょうど腹が減っておった頃だ。貴様が食べさせてくれるのか?」
膝に乗せた私を抱きしめると、揶揄い気味に吐息のかかる近さで囁かれた。
「っ、...........たまには、信長様が食べさせて下さい」
「はっ?」
「私のお団子もあるんです。その、一緒に食べたくて.........。いつも、食べさせたり飲ませたりするのは私ばかりだから、たまにはいいでしょ?」
「...................っ、」
信長様にしては珍しく、言葉を詰まらせた。
自分でも、何でこんな事を言ったのかは分からない。ただこの時は、城下にお買い物に行けた楽しさや、仕事を持てた嬉しさ。そして、それを何よりも褒めてくれた信長様に、もっと甘えたくなったのは確かで.........