第22章 初めてのお買い物
「はっ、いつの間にそんなに強請るのが上手くなった」
私の言葉に一瞬目を瞠った信長様は、次の瞬間には大きな声で笑った。
(強請るなんてそんな......事あるかも.....)
「団子をかせ、食べさせてやる」
団子の入った包みを渡すと、それを開いて一本手に取りかじった。
(えっ、なんでかじるの?............って、.....あっ、もしかして.........!)
「まっ、待って信長様!食べさせるの意味が違う」
私が言いたかったのは、信長様に団子の串を持ってもらい、それを私が食べるって事で、これだとまるで.......
「違いはせん。貴様がいつもする様に、俺がちゃんと食べさせてやる」
「やっ、それはっ、(た、確かにいつもしてるけど)............っ、んっ!」
団子を咥え笑いながら近づく唇が重なると、舌先で押した団子が口の中に入ってきた。
「ん、」
一瞬、お団子の甘さを感じたけど、
「んぅ!」
大きな舌が我が物顔で口内を暴れるから、味わう事なく私はその団子を飲み込んだ。
「ぷはっ、.....はぁ、もう、信長様!お団子が喉に詰まったらどうするんですか!?」
「俺はそんなヘマはせん。それよりもまだ食べ終わってない。口を開けろ」
「えっ、も、もう一口で、んっ、んん!」
串に刺さっていたお団子は全部で三個。その三個全てを食べさせられる結果となった私は、食べ終わる頃にはもう完全に蕩けていて、そんな私を満足そうに見ながら信長様は軍議へと行ってしまった。
「あ、お団子、食べてもらえてない」
私に食べさせるのに時間を使った為、食べ損ねた信長様のお団子はと言うと、軍議を終え天主に再び戻った頃にはすっかり固くなり始めていた。
けれど、「貴様からの物を無駄にはせん」と言って食べてくれ、私の安土に来て初めての買い物も、無事に終了した。