第22章 初めてのお買い物
「私は城下に出ることは出来ないし、お金も持ってないから買う事はできないけど、厨番にお願いして何か材料が余りそうな時は、何か作って持ってくるね」
一人・二人分とか、多少の食材は分けて貰えるけど、しっかりと献立を決めて仕入れをしている厨から何か材料をたくさん貰うのは気がひける。
「ちょっ、ちょっと待って!」
「何?」
「空良、お金持ってないの?」
女中達の驚いた声と顔。
「うん」
「こんなに毎日掃除してご飯も作って、後色々と家康様の手伝いとかもしてるでしょ?なのにお給金貰ってないの?」
みんな凄い身を乗り出して私を見ている。
「えっ、お給金なんてそんな、貰わないよ!」
「「「何で!?」」」
わっ、今度はみんなの声が重なった。
「元々私が何か信長様のお役に立ちたくてしている事だし、この城に置いてもらえるだけで私は幸せだから......。それに、それ以上の物を信長様からは日々頂いてて、それ一つをとっても私には買えないものばかりだから......」
「うーーん。そうかぁ。空良にとってここは家なわけだしね」
「私達もそれぞれの家に戻れば家事はするしね」
今度はみんながうんうんと、納得をする。
「でしょ?だからお給金なんてとんでもないよ」
本当に、考えた事もなかった.....。
「そっか。でも、お菓子のことは気にしないでね。私達は空良が女中の仕事を手伝ってくれるってだけでたくさん助かってるから」
「確かに....空良がここに来て女中の仕事を手伝ってくれる様になってから、女中着の質が上がったよね」
「そうだね。清掃道具も一新されたしね」
「私達もその恩恵は受けてるから、これはそのお礼だと思って。ねっ?」
「みんな、ありがとう」
「........でも、それとは別に。空良だってたまには城下にお出かけしたいでしょ?」
今度は小夜ちゃん。
「うーーん、正直言うとちょっとだけね」
「あっ、じゃあさ、今度一緒に買い物に行こうよ。逢瀬もいいけど、女同士も楽しいよ。美味しいお団子食べたりしてさ」
「うん。楽しそうだけど.....」
そんな事が許されるとか、考えたこともなかったな......