第22章 初めてのお買い物
あなたの腕の中というこの温かな空間は私の宝物。
「そろそろ行くか。奴らを待たせるとまた煩いからな」
「はい」
毎朝広間までの道のりを、優しく指を絡ませ握られる手が嬉しくて幸せで.......
これ以上の事は望まないと思っていた自分が、この後の女中部屋での会話がきっかけで、それ以上の事を信長様にお願いするなんて、この時は思ってもいなかった。
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「空良、珍しいお菓子が手に入ったからみんながお茶にしようって」
「あっ、行く行く!」
拭き掃除をしていると、小夜ちゃんが呼びに来てくれた。
秀吉さんに連れられ訪れた時はよそよそしかった女中部屋のみんなとも、時間が経つに連れ徐々に仲が深まり、今では女中部屋で日々繰り広げられるお茶休憩にも呼んでもらい、会話を弾ませることが出来るようになっていた。
「美味しい!」
「ほんと!これなんてお菓子?」
「”ぼうろ”って言うみたい。仲良くしてる南蛮寺の人から頂いたの」
「へぇ〜美味しい」
お茶を入れてぼうろを頬ばりながら、みんなで感想を言い合う。
お菓子はみんなの持ち寄りで、手作りの物、頂いたもの、買って来てくれた物など様々で、私はいつも美味しく頂くばかりだった。
「あの、いつも貰うばかりでごめんね。私も何かお菓子でも持って来られれば良いんだけど.....」
「そんな事気にしないで。私達も楽しく休憩したくて持ってきてるだけだから」
「そうそう、気にしないの。でも、.....信長様の元には日々沢山のお菓子が献上されるんでしょ?」
「あっ、うん。何か見た事も聞いた事もないお茶菓子がたまにあるよ。私も頂くことはあるけど、殆ど軍議の休憩時に出しているみたい」
「あ〜、政宗様そう言うの好きそう〜」
「光秀様と三成様にはちょっと勿体無いけどね〜」
「あははっ、言えるー」
ここにいると、武将達の様々な事も聞けて面白い。安土の女中達は、この町一番の情報通だ。