第21章 焦燥
「見た目、苦そうだな」
「あの.......苦いと思います。でも味もこれから工夫していくので今日はこれで我慢して下さい」
ずいっと、明らかに苦味の漂う湯呑みを俺の目の前に持ってきた。
「飲んでやっても良いが.......」
「っ、どうせ口移しで飲ませろって、言うんでしょ?」
ふっ、俺の心を先読みしたつもりか?
だがまだ詰めが甘い。
「ほぉ、貴様が湯呑みを持って俺に飲ませろと言おうと思ったが、そうか、口移しか。............そうだな、貴様がどうしても口移しでと言うならそれで飲んでやってもいい」
「!.......っ〜〜〜、」
騙されたとばかりに頬を赤くして俺を睨む空良。
「どうした、貴様の提案であろう?」
キッと悔しそうに俺を睨む空良の手をやんわりと引き寄せ、膝の上に乗せた。
「こ、今回だけですよ」
「約束はできん。それに、俺の為なのであろう?」
「うー〜〜、ホント意地悪っ!」
「早くしろ。飲んでやらんぞ」
「分かってます!」
観念した空良は薬を口に含んで俺に口づける。
「んっ」
苦味などは一瞬で空良の甘味へと変わる。
「んっ、信長様っ、まだ残ってます。......ん、」
「後で飲む。貴様を味わうのが先だ」
「えっ、.....んんっ.....!」
空良はまるで媚薬の様だ。一度知ってしまえば戻る事はできなくなる。
その男もきっとそうなのであろう。例え触れておらずとも、空良との時間を無かった事にはできぬのだ。
だがふざけるな、何が許婚だ、空良のこの笑顔を守れなかった奴がその思いを語るな!
俺の為を思い薬を煎じ、俺に愛を囁く様になるまでにどれ程の時間を費やしたと思っておる!
貴様など、空良からの恋文だけを抱いて一生を終えるがいい〔空良の初恋文を奪われた事はかなり根に持っていたらしい〕
空良の手から落ちそうな湯呑みを取り文机に置くと、空良の着物の裾を割って、敏感な部分に触れた。