第3章 侍女の仕事
これ以上この話を続けるのは私の方が危険だと思い、溢れたお酒を拭き終わった私は信長にお酒を注ごうとお銚子を手に持った。
「.......いや、いい」
信長は私の手からお銚子を取ると、お酒を飲み干した盃と一緒に膳に乗せそれを横にずらすと、ドサッと私の膝の上に頭を乗せた。
「っ..............」
(な、何?)
今の今、父と母のことを話していた男の行動とは思えず突然の事に固まっていると、
「何だ、これも初めてか?」
楽しそうに、その口は弧を描く。
「は、初めてじゃ......」
父上が母上にしておられるのを見た事がある。
「ふんっ、どうせ貴様の父が母にしておるのを見たとか言うオチであろう」
「そ、そんな事..........」
その通りだけど......
「言ったであろう、貴様は嘘はつけん。こんなにも脚に力を入れて硬くなった膝に頭を置いたのは初めてだ」
くくっと、信長は笑いながら私の腿を撫でる。
「っ、お気に召さないのなら、さっさと起き上がっていただけますか?」
何もかもを見透かされている様で悔しい.....
「いや、これはこれで悪くない」
そう言いながら、私の垂れ下がる横髪をやんわりと引っ張ると、無理やり視線を合わせて来た。
「.......な、何?」
「あまり身構えるな、襲いたくなる」
「なっ、......っん!」
力強い手が私の頭を簡単に引き寄せ唇を奪った。
「ん、やめっ、..........」
昨夜初めて知ったばかりの口づけなのに、唇は既にこの男の感触を覚えている様に、しっとりと重なり合う。
そして.....
「っ、 ....っ、..............ん、ん...」
無遠慮に舌が私の口をこじ開け捻じ込まれると、苦しい程に舌が絡められ、吸われ、何度も角度を変えて重ねられる。
「ん、やめっ..........んぅ」
力が......
どうしてこの男に口付けられると力が抜けていくのか....それとも、口づけとは誰としてもこうなのだろうか.....?
抵抗していた手の力も抜け始めた頃、
ドサッと言う音と共に、背中に床の冷たさを感じた。