• テキストサイズ

叶わぬ未来の夢を見る【イケメン戦国】

第21章 焦燥



「いた?空良はそう言っているのですか?」

俺が引っかかりを覚えた所を光秀も強調して来た。

「どう言う意味だ?空良は俺が聞くまでは其奴の存在すらも忘れておった。とうの昔にその話は無効になっておる」


「空良はそう思っているのかも知れませんが、向こうはそうは思ってはおりません」

「は?...... 空良は死んだ事になっているはずだ。其奴は死人を今でも思っておると?」


「その通りです。正しくは、その男は空良が死んだとは思っておりません」


「分かるように話せ」


「はっ!男の名は、日置嘉正(ひおきよしまさ)。越前の一部の領土を代々治める日置家の嫡男で、朝倉が滅びた後は、当時の領主、嘉正の実父が仏門に下り家督を嘉正に譲る事で、上手く織田の傘下に下っております」


「そのような経緯で家督を継いでおるなら、家を盛り上げる意味でも既に身も固めておるであろう?」


「それが、妻にするならば空良しかおらぬと....。私が空良一家の事を調査している事を聞きつけ嘉正の方から接触を図ってきました」


「ふんっ、愛しい女を守れなかったくせに何を今更」

妻にしたいと望むのであれば、なぜ奴を命懸けで守らなかった!


「空良の一家が夜襲を受けその屋敷に火を放たれるまでの時は僅か四半刻程であったそうです。騒ぎを聞きつけ駆けつけた時には既に屋敷も燃え落ち、ただ呆然とする他なかったと」


「それならば空良は死んだと思っておるはずだ」

「それが、執念と言いますか、恋する男の成せる技と言いますか、焼け落ちた後の屋敷の焼死体を全て調べ、空良では無いと確信したそうです。空良が屋敷から逃げ出し顕如に命を救われるまでの道のりも探し出しておりました」


「その後の事は?」

「その後、顕如に助けられた事は突き止めてはおりません。顕如側が巧みに住処を変えていたので分かってはいない様子で、.......ただ最近になって御館様の側近である私が空良の事を調べている事と、御館様が本能寺より連れ帰り寵愛している娘の名が空良だと言う事は世間の噂で耳にしていた様で、」


「して光秀、貴様はその問いに何と答えた?」

ざわざわと、胸が嫌な音を立てて軋む。


/ 679ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp