第20章 夢で逢いましょう
【空良が夢の中で悶えている頃、リアル信長様はなんと安土に戻っていた。】
「秀吉!空良の姿が見えんがどこにおる?」
京より急ぎ戻った俺は一目散に天主へと向かったが、そこに空良の姿はなかった。
俺の留守中、空良の護衛を任せておいた秀吉にその場所を聞く為、秀吉の自室へと足を向けた。
「の、信長様っ!いつの間にお帰りで!?」
驚いた顔で、書簡から俺へと顔を向ける秀吉。
近日中とは言ったものの、今日戻るとは伝えていなかった為、これは当たり前の反応だろう。
「つい今しがた戻った」
「お供の者達は?」
「遅いゆえ置いてきた。が、奴らに咎はない。責めてやるな。それよりも空良の姿が見当たらん。どこだ!」
「空良なら例の部屋で天日干しを」
「そうか。朝廷での事は明日の軍議で話す。今日はこれより空良と過ごすゆえ人払いをしておけ。何人たりとも天主に近づく事は許さん」
「はっ!」
京の畏まった雰囲気も、気位の高い公家の女どもも嫌いではない。
いや寧ろ昔はその雰囲気を楽しんでいたが、寛げる場所がただ一つとなった俺にはもうどうでも良い存在だ。
足早に空良のいる部屋へと向かい襖を開けた。
「空良、俺だ。今戻った」
呼んでも返事がなく、部屋の奥へ行くと寝転んだ空良の姿を確認する。
けれども、ピクリとも動かない。
「空良?」
(............寝ておるのか?)
正面に回ると、俺の着物を大切そうに抱きしめ、愛らしい顔で眠る空良の姿が..........
「ふっ、どうやら貴様も寂しかった様だな」
眠る奴の髪を撫で、安土に戻った事を実感する。
「この様な所で寝ると風邪をひくぞ」
気持ちよさそうに眠る空良の頬をムニッと摘んだ。