第19章 恋仲〜逢瀬編〜
でも、.........
「.....っ、信長様のお側にいたい」
もう、これ以上の奇跡は望まない。
ただ、何があっても信長様のお側にいさせて欲しい!
「お側にいさせて下さ....んっ!」
言葉は、最後まで言わせてもらえずに、苛立った唇に塞がれた。
「気に入らん」
僅かに唇を浮かせて信長様は拗ねた顔を見せる。
「えっ?」
「貴様はいつも、肝心な所で返事が遅い」
「そ、そんな事は.....んんっ!」
今度は黙れの口づけ。
いつの間にか廊下の壁に寄せられた身体は、信長様との口づけに押されて動けない。
「んぅ.....信長様、はっ、......待って、このままじゃ」
立ってられない。
「ふんっ、立てなくなる様に口づけておる」
「っぁ、はぁ.......な、何で.....はぁ」
がくがくと足は限界で、崩れ落ちそうな所を信長様に抱き上げられた。
「勿論、貴様が逃げんようにだ。貴様は急に居なくなったり拒んできたりと油断ならんからな。今宵はこのまま貴様を天主に連れて帰る。もう、反論は許さん」
「っ、.......反論なんて、...しません。今日一日、ずっとこうして信長様に触れたかったんです」
ずっと触れたかった信長様の首に抱きついて、思いを伝える。
「ふんっ、そんな事分かっておったわ。船の上でも、あんなもの欲しそうな顔を見せおって」
「きっ、気づいてたんですか?」
今日一日、いつ抱きしめてくれるのか、口づけしてくれるのかと期待していた自分に気づかれてたなんて、...........恥ずかし過ぎて、顔は途端に熱くなった。
「当たり前だ。.........常に俺の我慢を試しおって。
もう容赦はせん。今宵は、泣いた所で止めてはやれん。覚悟を決めよ!」
熱い、熱のこもった大好きな人の目が私を射抜く。
「な、泣いた所で止めてもらえないのはちょっと...」
すごく、困る..........
「ふっ、どんな俺も受け止めよ。俺を満たせるのは貴様しかおらん」
ご機嫌な顔で私の額に軽く口づけた信長様が愛おしくて、嬉しくて.......
「っ、........が、頑張ります」
天主に運ばれるまでの間ずっと、やっぱり心の臓が止まってしまうんではないかと思いながら、信長様の首に必死で抱きついた。