第19章 恋仲〜逢瀬編〜
「の、信長様........」
急いで城門へ向かったのに、そこには既に信長様が待っていて..............、
一日会わなかっただけだと言うのに、随分と会っていなかった様な、新鮮な気持ちになった。
「今日一日だけだ。貴様の言う恋仲の手順とやらに付き合ってやる」
綺麗な顔を少しバツが悪そうにして、信長様から話しかけてくれる。
「私、.....たくさんわがままを言ってごめんなさい......」
胸はいきなり煩い位に騒がしいけど、これは信長様に会えて嬉しいから。
「構わん。貴様には、ここに連れてきた日から色々と無理を強いてきた。今とて、色々と思う所はあるだろうが健気に俺の側で幸せだと笑う。そんな貴様の願いを一度くらいは聞いてやろうと思っただけだ」
ふんっと、私を見る信長様。
この日ノ本で今一番天下人に近いと言われるこの方が、どれほどの思いを抑えて、どんな気持ちで言ってくれているかなど、私には到底分かりっこない。
でも、
「空良」
私の名を呼び差し伸べられるこの手がとても温かくて優しい事を私は知っている。
もう、離したくない。
大きな手を握ると、優しく指を絡めて握り返された。
「手を取り共に歩きたいと思うのは、貴様だけだ」
たくさん怒られても仕方がないのに、あまりにも信長様が優しく笑ってそう言うから、繋がれた手の暖かさと相まって、涙が出た。
「う〜..............」
「その涙も、貴様の言う手順には入っておるのか?」
私の頬を伝う涙を長い指で拭いながら信長様は困った顔をするから、私は慌てて頭を大きく左右に振った。
「ふっ、ならば笑え」
「うぅっ、ごめんなさい。うう......あっ、この着物、ありがとうございます。可愛くて、とても気に入ってます」
そうだ、気持ちは素直に。特に嬉しい気持ちはたくさん伝えなくちゃ。
「気に入ったのなら良い。貴様によく似合ってる」
目を細めて笑う信長様はやはりカッコよくて、私は見惚れてしまう。