第18章 恋仲〜信長編〜
なのに、手順だと!?
物心ついた時から城主になった俺に、手順などなかったに等しい。
気を抜けば殺られる。それがこの乱世で、俺の生きてきた道だ。
手順など、誰も教えてはくれなかったし、踏んだ事もない。
それなのに、奴は簡単に俺を焦らして訳の分からぬ手順を踏めと言う。
嫁入り前の娘がどうのと言っておったが、いずれ俺が妻にするとずっと言っておるのに、首を縦に振らぬのは空良の方だ。褥を共にしておって、祝言の日まで抱かぬ腑抜けな男がいるなら会わせてみよ!
「全くもって分からぬ」
女一人にこの俺がこうも手こずるとは.......
「今宵は他の女で紛らわせるか」
口に出しては見たものの、空良以外に抱きたいと思う女などいるはずもなく、俺が思っている以上に、今の俺は空良に溺れている事に気づく。
空良がこの城に来てからと言うもの、夜の町に行く事がなくなった。器量の良い女と手管を用いた一夜限りの情事を楽しんでいた俺はもういない。
初めて愛おしいと、側に置きたいと思った女は、何の手管を持たずとも俺を煽り、その情事に夢中にさせる。
もう、他の女どもを今までどう抱いていたのか思い出せぬが、空良を抱くような抱き方はしていなかった事は確かだ。
唇を奪い、己の証を刻みつけ、奴を酔わせて乱れさせたい。
それなのに、
「俺がこれほどまでに奴を求めておるのに、寛げぬから離れたいだと!?」
〔注: 空良はそんな事は一言も言っていない〕
奴の言う手順は分からぬまま、滾る熱を必死で押さえつけ、俺はそのまま大広間で朝を迎え、先程の秀吉とのくだりになる。
・・・・・・・・・
「信長様、お待たせしました。お着替えです」
秀吉が俺の着替えを手に広間へと戻ってきた。
「遅い!何をしておった!」
「申し訳ありません。空良と少し話を....」
慌てながら俺に着替えを手渡す秀吉。