第18章 恋仲〜信長編〜
「仲を深めるため、俺をわざと焦らしておるのか?ならばその作戦は成功だ」
(天然の悪女め、貴様は本当に先が読めん。
これ以上貴様に付き合っておったら身体がもたん。)
痺れを切らした俺は、奴の白くて細い首筋に吸い寄せられる様に口づけを落とす。
「...........っ、の、信長様!?待って」
「仲を、深めたいのであろう?お望み通り、今宵も深く愛してやる」
(貴様は俺のものだと、今宵もしかと分からせてやる)
手始めに、奴の首に俺の証を刻めば、奴の肌は途端に熱くなり、それと共に甘い匂いも濃くなっていく。
そのまま奴の寝間着の紐を解こうとした時、
「わ、私は、信長様と本当の恋仲になりたいんです」
華奢な身体を捩りながら、訳の分からぬ言葉で抵抗をして来た。
「俺達は既に恋仲だ。どう言う意味だ?」
動きを止め、僅かに頬を上気させた空良を見下ろす。
「今日、女中仲間と話していて、私は恋仲としての手順を踏んでないって事に気づいたんです」
「は?」
「だ、だから、私はもとは侍女として信長様のお側に付いたので、その、.......初めから、あの.....致してしまったわけですが.........、恋仲の男女は、思いが通い合った後は、逢瀬を重ね、手を繋ぎ、口づけをしてと、順序立てていくもので.......侍女から恋仲になってしまった私には、まだ心の準備がしっかりできてないと言うか........」
必死で言葉を紡ぎ話す空良だが、その内容は、俺には理解し難く。
「........言っておる意味が全く分からん。愛する女が目の前にいて褥を共にしておるのに、抱かぬ男がいると、貴様は言いたいのか?」
空良の強情さを誰よりも分かっている俺は
真相を聞く為、一旦身体を起こした。
「それは.......、私たちは衣食住を共にしてますから。でも普通は別々に住んで逢瀬を楽しんで少しずつ距離を縮めていくものかと.......。現に母上にも、嫁入り前に殿方と深い関係になるのはいけないと教えられてきましたし.......」
空良も説明をしながら慌てて身体を起こすが、やはり俺には理解し難い内容であり、それは俺の怒りを煽るには十分だった。