第17章 恋仲〜後編〜
「このまま湯あみに行こうかな.........あっ、」
そう言えば、湯あみはどうしよう。
いつもは信長様専用の湯殿を一緒に使わせてもらっていたけど、今夜はそれはやめたほうがいいよね。
(小夜ちゃん誘って一緒に入りに行こうかな。今朝のお礼もしたいしいいかも)
「空良様、いらっしゃいますか?」
着替えを用意しようと立ち上がると、襖越しに声をかけられた。
「は、はい」
信長様の部下の方の声。
「信長様より空良様へお届け物です」
「え?」
(信長様から!?)
「あ、......い、今直ぐ開けます!」
手にした着替えを投げるように置いて、慌てて襖を開けに行った。
「あの、......」
「信長様より、こちらを空良様にと」
私のあまりの慌てっぷりに笑いを堪えた様な部下の方は、手に持つ衣装箱と、その上に置かれた文を私に差し出した。
「これ..........」
もしかして.......
「空良様には少し重い物ですので、部屋の中に置かさせて頂きますね」
「あ、....ありがとうございます」
「確かにお渡し致しました。それでは失礼致します」
ぺこっと頭を下げると、信長様の部下は襖を閉めて部屋を出て行った。
「ど、どうしよう.......」
今日一日大人しかった心の臓が、途端にドキドキと高鳴り出した。
部屋の真ん中に置かれた衣装箱と文。
どちらも気になるけど、やはり文の内容が凄く気になる。
文の前に正座して居住いを正し、深呼吸を何度かして気持ちを落ち着けた。
「失礼します」
色鮮やかな信長様らしい色合いの文を手に取り包みを開くと、ふわりと香の香りが漂って来た。
「良い香り.........」
いつもの信長様とはまた違う香りと私の文よりも何倍も素敵な文に、やはり恐縮してしまう。
見た目は恋文だけれど昨夜の事もあり、中身を読むのはやはり勇気がいる。
「落ち着け、私」
緊張で自然と上がってしまう呼吸を落ち着けて、ゆっくりと文を開いた。