第17章 恋仲〜後編〜
「あ、ありがとうございます」
(どうか読んでもらえますように)
きっと、天主に自分で置きに行ってあの恋文の山を見ていたら置けずに帰ってきてたから、強引にも持っていってもらえて良かった。
自分の言った何気ない言葉がたった半日で大ごとになってしまったけど、秀吉さんの言う様に、これは私にとって必要な儀式なら、ちゃんと受け止めて前進しなければ。
「信長様に会って、声、聞きたいな」
当たり前の日々は、急に当たり前じゃなくなるって事、私自身が一番分かっていたのに。たった半日、信長様に会えないだけでこんなにも寂しい。
「空良、こんな所に突っ立ってどうした?」
「あ、政宗さん?」
今日は本当に、色々な人に会う日だ。
「政宗で良いって言ったろ?聞いたぞ、信長様の夜伽にケチつけて怒らせたらしいな」
「..............」
..........もう、どこをどう訂正すれば良いのかも分からなくなってきた。
「そんな顔するな。仲直りをするにはうまい飯を食わせるって決まってる。来い、協力してやる」
「えっ!政宗さ...政宗、どこへ?」
返答に困る私の手を引っ張って政宗は歩き出した。
「いいからついて来い」
えぇっ!
・・・・・・・・・・
「ここって..........」
「見ての通り台所だ」
そう、政宗が私の腕を引っ張り連れていった先は台所。
「お前、料理は作れるか?」
いつもの事なのだろうか?
ズカズカと台所に入って行く政宗に誰一人として驚く事なく、黙々と周りは夕餉の支度を進めている中、包丁を手にした政宗が私に問いかけた。
「あ、はい」
「なら、話は早い」
「え?」
「今日の味噌汁はお前が作れ」
「えっと.....」
「お前、里は確か.....」
「越前です」
「ああ、そうだったな。味噌が違うがまぁ何とかなるだろう」
「何とかって?」
一体何の話をしてるんだろう?
急に、しかも中々の強引っぷりに、私の頭は混乱していた。