第17章 恋仲〜後編〜
「でももう、嫌われたかもしれない」
私は、そんな信長様の優しさに甘えて、調子に乗ってしまったから........
「本当に嫌われたのなら、空良は城を出されて今頃ここにはいないと思うよ?今回の事は多分、夜伽を断られたみたいな気がして男心が傷ついて怒っただけで、信長様も仲直りをしたいんじゃ無いかなぁ...........って、私にも男心とかはよく分かんないんだけど、やっぱり好きな人には触れたいじゃない?」
ふふっと小夜ちゃんは照れたように笑う。
「うん、そうだね。小夜ちゃん、ありがとう」
「元気出して早く仲直りしなね。今夜一人で寂しかったら私の部屋に来て一緒に寝よう?」
「うん。ありがとう」
優しい言葉を残して、小夜ちゃんは仕事に戻って行った。
そして私も廊下の拭き掃除へと戻り、信長様が視察から戻られたらどうやって謝ろうかと考えを巡らせた。
「うーーん、全然思い浮かばない。どうしよう........」
頭の中も、拭き掃除も中々思う様に捗らないまま掃除を続けていると、また人がやって来た。
「空良様、ここにおいででしたか」
次なる人は爽やかな好青年の三成くん(何故か自然とそう呼ばせてもらっている)。
「三成くん、...どうしたの?」
拭き掃除をやめて立ち上がると、三成君は手に持っていた沢山の書物を私にずいっと差し出して来た。
「...........これ、は?」
「空良様が、恋仲の事を学びたいと仰っていると聞きまして、書庫よりそう言った類の書物を何点かお持ちしました」
「そんな事を教えてくれる書物があるの?」
盲点だった。
そうだよ。困った時の書物だよ。
どうしてそこに気づかなかったんだろう。
「お恥ずかしながら、私も色恋沙汰は詳しくありませんので、光秀様にご推挙頂きました書物を選んで参りました」
「あの、見てみてもいい?」
「勿論です」
爽やかな笑顔と共に、一番上の書物を手渡してくれた。