第17章 恋仲〜後編〜
「ど、どう言う意味?(やっぱり痛い〜)」
「だってあのお部屋は、信長様が重要なお客様をお泊めする時に使うお部屋で、天主に次いで二番目に重要なお部屋だって聞いてるよ。だから掃除に入る者は皆粗相が無いように丁寧に掃除するって聞いてるもの」
「そんな凄い部屋なの!?」
確かに、天主に負けず劣らず豪華な部屋だとは思ったけど..........
「そんな凄い部屋だって聞いたらもういられないよ。今夜は小夜ちゃんのお部屋に泊めてもらえないかなぁ?」
秀吉さんには申し訳ないけどやっぱり.......
「ダメだよ。だってこれって多分、信長様なりに空良の望む恋仲の形を実現してくれてるんでしょ?」
「私の望む形?」
「きっとそうだよ。空良が恋仲の手順って言ったから、離れて過ごす所から叶えてくれてるんじゃ無い?」
「それは.....」
確かに、昨夜はそんな事を言ったけど.......
「でも、凄く怒ってたし、本気で呆れて追い出された気もするけど.......」
あ、また涙が出そう。
意地悪な事はたくさんされたけど、いつだって信長様は優しくて、今回の様な事は本当に初めてで.........、正直、どうして良いのか分からない。
「うーん、空良は知らないと思うけど、空良が来るまでの信長様はそれはそれは恐ろしくていつもピリピリとされていてね、廊下ですれ違うだけでも恐怖で震え上がる程で、粗相なんかしたら手討ちになるか城から追い出されるかのどちらかだから、皆震える様に城勤めをしていたんだよ?」
それは、まさに私が顕如様達から聞いていた信長様像で、でも私はそんな信長様を見た事がないから、ただの噂だったのだと思い始めていたけど、やはり噂は本当だったって事?
「だから、空良といる信長様を初めて見た城の者達は皆驚いたんだよ。あんなに優しく笑う信長様を誰も見た事がなかったから」
小夜ちゃんの言葉で、信長様の優しく笑う姿を思い出した。