第17章 恋仲〜後編〜
用意された部屋は、天主の部屋に負けず劣らず豪勢な部屋で、私一人にはとても広くて落ち着かない。
結局、どうにも居心地が悪くて、いつも通り城内の掃除に行く事にした。
「よしっ........と」
髪を結い上げ袖を縛り上げて雑巾を手に持った所で、バタバタとこっちに向かって走ってくる小夜ちゃんの姿が見えた。
「小夜ちゃん?」
(あんなに慌ててどうしたんだろう?)
「空良、大丈夫?」
私の前で立ち止まると、心配そうに両手を握られた。
「あ、もしかして、信長様との事?」
(さすが情報が早い)
「そうだよ!信長様を怒らせて恋仲じゃなくなったって本当!?」
「えぇっ!!」
話が大きく変わってる!
「天主からも追い出されたって聞いたけど、大丈夫?」
「う、うん。大丈夫......ではないけど、信長様とはまだ恋仲だと思う....よ?(なんだか、どんどん自身無くなって来たけど.....)」
心配そうに見つめる小夜ちゃんに、私は秀吉さんの時同様に、昨夜の事を話した。
「...........そう言うことかぁ」
「なんか......心配かけてごめんね。でも、信長様との恋仲関係がもう終わった事になってるのには、私も驚いたけど.....」
「うん、もう女中部屋は朝からその話でもちきりだったよ。信長様には既に新しいお相手ができてその女の人に会いに視察に行ったって話まで出てた位」
まだ昨夜からあまり時間も経っていないのに、噂に尾がつき何だか大事になっている。(しかも新しいお相手は本当にいそうな気がしてしまう)
「でも、お部屋は本当に出されちゃったんでしょ?どこの部屋?」
「あ、お部屋は、この角を曲がった一番奥のお部屋だけど..........」
私は後ろを向いて、新しく与えられた部屋を指さした。
「え、あのお部屋?」
「うん」
「何だぁ、やっぱり愛されてるじゃん」
興奮すると、背中を叩く癖のある小夜ちゃんの平手が私の背中でバチンっと、綺麗な音を立てた。