第17章 恋仲〜後編〜
「..................あれは確かに可愛い」
(そして構いたく、いやいじめたくなる)
あんなナリと性格で、よく信長様に会うまで無傷でいられたものだ。いや、一度だけこの城内で危ない事があった。
だからこそ信長様は、空良をこの天主に置いてあまり外には出さず、大切に、それは誰の目にも明らかな程大切に守りながら愛しんでおられるのだろう。
本能寺から、空良を連れ帰ったと聞いた時には驚いたが、空良がこの城に来てからと言うもの、様々な事が好転していった。(危ういことも多々あったが.......)
何と言っても信長様自身がいい意味でとても柔らかくなられ、城内の雰囲気が明るくなった。
相手に不自由などされた事のない信長様だが、手元に置くと言ったのも、敵陣に鎧も着けずに自ら誰かを取り返しに行ったのも初めての事で..............、幼くして城主となられ、ずっと気を張って生きて来た信長様が唯一少年の様な振る舞いを空良にだけはなさるのを、遠巻きに何度か見た事がある。
考え方も、育った環境も、何もかもが異なる二人が恋仲となり、羨ましいほどの愛情をお互い与え合う姿はもはやこの城内だけでなく、町全体で噂される程で俺はとても感動していたのだが、そんな二人でも意思疎通が上手くいかずすれ違う事もあるのだ。
日頃が日頃なだけに、喧嘩の噂は直ぐにでも広まりそうだな。
「はぁ〜、お二人には早く仲直りをして頂こう」
ただでさえ今日は忙しいのに余計な仕事が増えた俺は、この出来事が中々に大きな噂へと発展していく事も知らず、信長様の着替えを手に広間へと戻った。