第17章 恋仲〜後編〜
「空良、俺だ、秀吉だ、入ってもいいか?」
「........秀吉さん?は、はい」
部屋の前に立って襖越しに声を掛けると、返事の後、慌てて走って来る足音と同時に襖が開いた。
「........秀吉さん」
「空良、お前.........」
多分、一睡もしていないのだろう。
綺麗に身支度は整えられていたが、空良の泣き腫らした目を見れば、それは一目瞭然だった。
「信長様の着替えを取りに来たんだが.......」
襖が開けられるまでは何が原因であろうと空良に一言苦言を呈するつもりでいたが、目の前の憔悴した空良を見たら言い出す事が憚られ、言えなくなった。
「あ、.......今すぐに用意しますのでお待ち下さい」
おそらく空良は、信長様が戻ったと思ったのに違っていてがっかりしたのだろう。慌てて信長様の身支度の用意を整える空良の背中は分かりやすく落ち込んでいる。
「信長様と、何かあったのか?」
その言葉にビクっと空良は反応した。
「............秀吉さん、私..........」
振り向いて俺を見た空良の目からは大粒の涙が溢れ出した。
「お、おいおい落ち着け、何があったか教えてくれ」
・・・・・・・・・・
「...............なる程な、話は大体分かった」
昨夜の出来事を空良から聞き終えた俺は、はぁ〜っと大きなため息をついた。
「秀吉さん?」
「いや、ちょっと考える時間をくれ」
不安げに俺を見つめる空良だが..............
(要は、夜伽を断られた信長様が拗ねて部屋を出て行かれたって話だよな?って言うか、俺はそんな二人の喧嘩の為に朝から信長様に怒鳴られたのか?)