第17章 恋仲〜後編〜
「今日も忙しくなるな」
一日の始まりを迎える大広間へと歩きながら、俺は一人やる気をみなぎらせていた。
「おはようございます!!」
毎朝一番乗りな為、誰もいないことはわかっている俺は、襖を勢いよくスパンと開け、気合を入れる意味でも広間に響く大声で挨拶をして頭を下げた。
「秀吉っ、朝から煩い!何事だ!」
「.........................え?」
毎朝、俺は誰よりも一番早くこの大広間に入る。それは、信長様他武将達が揃って朝餉をとるにあたり、何の不備もない事を確認する為で..........
なのに俺の耳に届いたのは、この身を捧げると誓った信長様の声。
慌てて頭を上げると、広間の上座に横たわる信長の姿が.......!
「信長様っ!?こんな所で何を!.......もしや、昨夜はここにお泊まりで?」
「煩い、俺に話しかけるな」
そしてすこぶる機嫌が悪い。
「空良と、何かあったんですか?」
それしか理由はないと思うがとりあえず聞かずにはいられない。
「別に何もない。これ以上俺に話しかけるな、今すぐ着替えを持って来い」
どうやら図星の様だ。
「はっ、では急ぎ着替えを用意する様に空良に伝えてきます」
もしや、喧嘩でもしたのか?
「空良の名前は出すな!奴とは暫く部屋も飯も別々だ。例の部屋を奴に与えて護衛も付けておけ。俺が天主に戻るまでには移動をしておく様に伝えておけ!」
それだけ言うと、信長様はふんっと拗ねた様に背を向けゴロンとまた寝てしまわれた。
「はぁ、直ちに取りかかりますので失礼します」
訳がわからないまま、頭を下げて俺は広間を後にした。
「完全に空良と喧嘩したな」
あんなに毎朝人目も憚らず嬉しそうに手を繋いで朝餉に来ていたのに一体何が?
「信長様が話して下さらないとなると、空良に聞くしかないな」
取り敢えず真相を探るべく、俺は足早で天主へと向かった。