第16章 恋仲〜前編〜
「な、何で?(い、痛い)」
「だってそんなの、相手が求めて来たら嬉しいし。私だって少し怖いけど、もっと彼の事分かりたいもの」
「そ、そうだよね」
その言葉に、少しだけホッとした。
それに本当に身体を重ねると信長様の気持ちがよく伝わってくる。ここ最近は特にそうで、溶けてしまいそうなくらいに甘く愛されていると実感できる。
『空良』
特にあの低い艶のある声で耳元で囁かれると身体中がキュンってなってしまって...........
「さっきみたいに仲睦まじい二人を見ると、そろそろいいかなぁって思うけど、私まだ彼といるとドキドキしちゃうから、もう少し今の状態を楽しんで慣れてからの方が良いかなぁとも思うし.......」
「なる程.........。私が信長様と今一緒にいるだけですごくドキドキするのはそう言う時間がなかったからかも....」
ここへ連れて来られた最初の夜にはお手付きになって、次の日には侍女になってしまった私達には、小夜ちゃん達のような清い時間が無かったのは確かで........
「空良の場合は仕方ないよ。信長様に気に入られて本能寺から連れて来られたんでしょ?でも今は、侍女ではなく恋仲になったんだものね。空良は今、私達女中の希望の星なのよ!」
「え、..........それはまた急に何で!?」
希望の星って........話がかなりとんでしまったけど......
「だって、侍女と言う立場だと、信長様のお子を授かった時にはお部屋を与えられ、お部屋様と言う立場の側室にはなれるけど、ご正室に決してなれないじゃない?そんな例は今までも聞いた事がないし..........。だけど信長様はわざわざ侍女であることを取りやめにして、空良とは恋仲だと宣言されたんだよ?ゆくゆくは空良を正室にしたいという信長様の男気と、空良への深い愛情を感じるよね〜」
小夜ちゃんは両手を握りしめて上を見上げながらうっとりと語るけど...
「ま、ま、待って!正室って、私にはそんな荷の重い話......それに、身分が違いすぎる」
いくら恋仲になったとは言え、小さな国のましてや滅びた国の娘が正室になるなんて、それこそ聞いた事がないよ.........