第16章 恋仲〜前編〜
「もう、私より空良の方が分かってるくせに!!」
「分かってるって......私が信長様と恋仲になったのは最近で、小夜ちゃんの方が、その.......先輩だと思うのだけど......」
「やだぁ、だって私はまだ恋仲になって一年も経っていないからさっきのような情熱的な口づけはまだ経験してないよぉ」
更に顔を赤らめて、照れながら小夜ちゃんは言う。
いや待って、私だって、出会ってからまだ一年も経っていないわけで.......
でも、
「えっ、だって.......恋仲になったら、好きな時に口づけてもいいんでしょ?」
信長様はそう教えてくれたけど......
「そ、それはそうだけと思うけど、あんな自然には中々私たちはできないかな。まだそんな深い関係にはなってないしって、やだぁ、そんなこと言わせないでよぉ」
目の前で恥ずかしそうにしている小夜ちゃんには申し訳ないけど、私はいまいち理解ができていない。
「あの、変な事を聞くようだけど、小夜ちゃん達は恋仲なのに、さっきみたいな口づけは、しないって事?身体の関係もないの?」
話を総合すると、そう言う事だよね?
「え〜、本音を言うとしたいけど、ほら、順を追ってって言うか?夏祭りから何回か逢瀬を重ねて、手を握ったり、軽い口づけはあるけどまだそんなには.......」
モジモジと、言葉を濁す小夜ちゃんに、昔母上に教えられた一般常識的なものがじわじわと思い出されてきた。
そう言えば、確か母上は、許婚の方と祝言を挙げるまでは清い関係でいなさいと言わなかっただろうか?だからこそ許婚の方との花火での逢瀬も、手を繋ぐだけの清いもので、男女の事は空良にはまだ早いから教えられないわとかなんとか...............
...........あれ?私.....母上の言いつけを守っていない!?
「ね、ねぇ、小夜ちゃん」
「何?」
「その、小夜ちゃんはその方と夫婦になるまではしない.....の?」
「やだぁ、そんなの分かんないよ」
バチーンと、今度は背中を思いっきり叩かれた。