第16章 恋仲〜前編〜
顔の火照りを冷ますように手で煽り、少し乱れた呼吸を整えていると、
「空良ーーーー、見たよ〜」
客間の襖を少しだけ開けて、小夜ちゃんがニヤリとこっちを見ていた。
「っ!........さっ、小夜ちゃん!?」
見たって.......言った!?
手で扇いでいた顔はさらに赤く火照り、ボンっと頭から噴火したように恥ずかしさで一杯になった。
「真っ赤になっちゃって、空良可愛い」
襖から出てきた小夜ちゃんは尚も私をからかう。
「言わないで、お願い〜」
口づけを見られるなんて、もう、それはそれは今更な事なんだけど、(初めて武将達に会った広間でもされたし、何と言っても丘の上で濃厚なものも見られている)やっぱり恥ずかしいし、あまり人前でするものでは無い(はず.......)
「何でそんなに恥ずかしがるの?口づけって、好きじゃ無いと出来ないし、愛されてるって感じしない?」
「そ、そうだけど......」
口づけは私も好きだけど、場所はやっぱり選んで欲しい気が........(そう言えば、自分から人前でした事があるような気もしてきた......)
「でも信長様って、あんな情熱的な口づけをされる方なんだね。見ててキュンってしちゃった」
はあ〜っと、小夜ちゃんの口からは感嘆の声が漏れた。
「ほんと、恥ずかしくて倒れそうだからこれ以上言わないで。小夜ちゃんも、恋仲の人と同じように口づけるでしょ?一緒だよ?」
夏祭りの時、好きな人と気持ちが通じて恋仲になったって言ってたし。私より先に恋仲になったんだもの。もっときっと情熱的な口づけをしているはず......
「もう、やだなぁ〜、あんな情熱的な口づけ、恋仲同士でも中々しないよ〜」
「え?」
バンっと、照れながら私の背中を叩く小夜ちゃんの言葉に耳を疑う。
「さっきみたいな口づけは、ほら、...........だから、あれよ。あの、........あの時とか........ね?」
「あの時って?」
途端に赤い顔でしどろもどろになりながら話し出した小夜ちゃんに、私は首を傾げるしかない。