第16章 恋仲〜前編〜
「ご、ごめんなさい」
仕置きと言っても、甘い仕置きだと分かっている私の胸は、ドキドキと騒がしく鳴り出した。
「髪に埃がついておる」
手を伸ばし、私の頭の上についている埃を取り、ふっと口で飛ばした。
その所作すらも優雅で見惚れていると、信長様と目が合った。
「あ、ありがとうございます」
お礼を言っても、まだ私をじーっと見つめる信長様。
「.............あの、まだ何かついてますか?」
「いや、何もついておらん」
ふっ、とその顔は優しく微笑みながら私に近づき、ちゅっと触れるだけの口づけをした。
「............っ、...................ここ、廊下ですよ?」
嬉しいけど、誰かに見られでもしたら!
「隙を見せた貴様が悪い」
「だ、だからって.......誰かに見られたら........、」
「見られても困らん。.........むしろ、見せてやれば良い」
「え、」
その綺麗な顔がイタズラな笑顔に変わると、
「んっ」
私の横髪を梳くように手を入れて引き寄せられ、廊下の真ん中で、しゃがんだ姿勢のまま唇が重なった。
「んっ.........っ、」
軽く口内を擽られると、ちゅっと音を立てて唇は離れた。
「俺以外にそんな隙を見せるなよ」
軽く息のあがった私のデコをピンッと軽く小突いて、信長様はご機嫌で去って行った。
「な、......何?」
嵐の様に来て去って行くその姿に、ただ見入ってしまう。
「う〜〜〜、どうしよう〜!ドキドキする〜」
信長様と恋仲になってまだ僅か。
恋仲とは、こんなにも甘く心を疼かせるのかと言うほどに、私の胸は毎日がキュンキュンして忙しい。